会長挨拶
GREETING

石内 勝吾
第7回日本脳神経外科学認知症学会会長
石内 勝吾
琉球大学大学院医学研究科脳神経外科 教授

この度、第7回日本脳神経外科認知症学会学術総会を2023年令和5年11月4日(土)5日(日)に、沖縄県市町村自治会館(カフーナ旭橋)で開催させていただきます。会場は那覇空港駅よりゆいレールにて旭橋駅下車(空港から12分)、駅ホームと会場を繋ぐアーケード伝いに徒歩3分、バスターミナルに近く観光や買いものに利便性の高い場所に位置しています。新型コロナ感染対策は第5類となり、本会の感染前の第3回までと同じ対応として開催いたしますが貴重な先生方のご講演を会員の皆様がすべてお聞きいただけるよう、ご許可いただけた先生方のご発表は開催1か月後のオンデマンドでの視聴のために録画をさせていただきます。

第7回学術総会の主題は「ヒト脳の理解と認知症医療」とさせていただきました。認知症医療に関してはプロトフィブリルと結合することでアミロイド線維形成の抑制を図るレカネマブの社会実装に伴い、2023年1月米食品医薬品局(FDA)承認と2023年8月21日に厚生労働省薬事・食品衛生審議会了承の基盤となった第3相試験(Clarity AD)の詳細について中川 雅喜様(Eisai Inc.)に特別講演をお願いしました。これに伴いPETにおける認知症の鑑別診断について量子科学技術研究開発機構の樋口真人先生にお願いしました。

今回2つの特別企画を用意しました。1つ目は日本脳ドック学会との合同シンポジウムです。早期認知症の診断とその治療など両学会には共通する多くのテーマがあり堀智勝理事長と鈴木倫保理事長へそれぞれの学会の歴史と展望に関するご講演を依頼し、また吉井與志彦副理事長と井川房夫先生にMCI等に関するご講演と座長をお願いしました。Personal health recordの有効利用法の樹立やMCIに対する診断と治療の連携など今後の両学会の発展的協同の具現化の一歩となれば幸いです。2つ目の企画は「認知症の本質と予防の実践」と題し専門分野のみならず広く知の泰斗であられ生涯現役でご活躍の寺岡暉先生と端和夫先生、そして百寿者研究の草分けで沖縄長寿科学研究センター長の鈴木信先生に特別講演をお願いしました。大先達のお知恵を拝借できる良い機会となれば幸いです。

恒例の「もの忘れ外来診療のためのエッセンシャル」講習会は吉井先生にご企画及び司会進行をお願いしました。認知症医療の基本から最新の知識までを学んでいただき、今後の診療にお役立ていただければ幸いです。

ヒト脳の理解を進めるため、局所解剖学に習熟している脳神経外科医もグラフ理論に基づく大域的なネットワーク解析の理解が必要な時代になりました。この分野の草分けであられる福田寛先生(東北大学)に教育講演をお願いし、これから脳ネットワーク解析をはじめようという先生方のために小野田慶一先生(追手門学院大学)に事始め講習会をお願いし教室の西村は我々が現在行っている安静時脳活動の方法論、シークエンスや解析手順の詳細を、宇杉がヒトコネクトーム解析に関してFreesurfer( version7.3.2)と新しい機能的な関心領域360 領域の最新版アトラスHuman connectome multi-modal parcellation(Glasser MF et al., Nature 2015)を用いた脳表解析の臨床応用の実際を解説します。2つ目は最新の研究から小脳は運動制御の座であると理解されていますが非運動機能とりわけ高次脳機能も司り高度な認知機能を実現するために重要であるという成果が得られています。この領域のパイオニアであられる杉本泉先生(東京医科歯科大)と今水寛先生(ATR認知機構研究所)に特別講演と基調講演をお願いしました。皆様の小脳に関する理解が深まることを期待しています。

水頭症、脳卒中、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などの頭蓋内器質疾患によるTreatable dementiaは脳神経外科医の貢献が大きい領域です。専門的な立場からそれぞれ間瀬光人先生、飯原浩二先生、脳腫瘍は下垂体腺腫を松野彰先生・グリオーマを中田光俊先生・第三脳室腫瘍を松尾孝之先生、登坂雅彦先生へ基調講演またはランチョン形式でお願いしました。「認知症と感染症」のシンポジウムではCOVID-19の罹患後にみられる遷延する神経症候いわゆるPASC (post-acute sequelae of SARS-CoV-2)ことに認知症やbrain fog等やHIV感染症に伴う認知症も今後重要な課題と思われ後者については琉球大学の感染症・呼吸器科・消化器科(第一内科)の仲村秀太先生にお願いしました。
紙面の都合上すべてを紹介できませんでしたがいずれも素晴らしい珠玉の82演題を頂戴いたしました。プログラムは特別企画2、ランチョン2 特別講演2、教育講演2、基調講演3、大会長講演1、理事長講演1、シンポジウム5、一般講演4,講習会2の構成となっています。82演題のうち応募演題が48(一般41、シンポジウム7)、41題の内14題をシンポジウムに回させていただきました。11月の上旬の美ら島に皆様おいでいただき沖縄の晩夏を体感いただきながら、沖縄独自の自然や歴史、様々な国の文化が融合した食などにも親しんでいただけましたら幸いです。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。尚、皆さまには会期中心配りの足りない点やご迷惑をおかけいたすことも多々あるかと存じますがどうか美ら島の素晴らしい気候風土と文化に免じてご容赦願えれば幸いです。

会員の皆様のご指導ご鞭撻の程何卒よろしくお願い申し上げます。

謹白
大会長
石内 勝吾

米軍により焼き尽くされたアカギの大樹(左図)はアコウの木が朽ち果てた大樹の幹を支え一体化して(右図)戦後78年後の今も生き延びている(首里城城壁道)。
左図では復元された守礼門が人物の左肩遠景に見える。

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